Basic Research
About Hematology
私たち血液グループでは、「真に臨床の質の向上に資する基礎研究」を目指し、日々、チーム一丸となって研究に取り組んでいます。臨床現場から生じる疑問を研究という形で掘り下げることで、新たな治療法の開発や病態理解の深化に繋げることを目指しています。新しい研究メンバーを随時募集中です。「臨床で感じた疑問を実験的に明らかにしてみたい」、「研究に強い関心はないが、少しだけでも携わってみたい」といった先生方、いつでもお気軽にご連絡ください。コメディカルの方、学生の方からのご相談も歓迎いたします。
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Research on the Homeostasis of Regulatory T Cells in the Body
制御性T細胞の
生体内恒常性の研究
制御性T細胞は、順調な移植後免疫再構築に極めて重要な役割を担っています。一方、制御性T細胞はもともと生体内環境に敏感に反応するサブセットであり、一定以上の炎症環境ではホメオスタシスの維持が難しくなることが明らかになっています。私たちは、様々な免疫モジュレーターによる環境調節により、制御性T細胞の生体内恒常性を保持し、移植患者の免疫再構築を安定化させる研究を続けています。
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Immune Monitoring Research in Transplantation and Immune Cell Therapy
移植・免疫細胞療法の
免疫モニタリング研究
同種移植、二重特異鎖抗体、CAR-Tといった免疫療法をより効果的に実施するためには、患者の免疫細胞の質と量の維持が重要になっています。臨床のスピード感に対応できる実践的な免疫モニタリング系を構築し、臨床アウトカムと相関するバイオマーカーを検索しています。
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Research on the Development of New Drugs for Controlling Graft-versus-Host Disease
新しいGVHD制御薬の
開発に関する研究
GVHDを抑制することは安全な同種移植に不可欠ですが、一方で特に非寛解症例に対する移植では移植早期からの移植片対白血病効果(GVL効果)の発現が必要となります。GVHD を抑えつつも、免疫疲弊を回避し、GVL効果を担保できる表現型を有するドナーリンパ球の回復促進が可能な新規免疫制御法の開発を目指す基礎研究、およびトランスレーショナルリサーチを進めています。
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Comprehensive Understanding of the Inflammatory Microenvironment in Chronic GVHD and Development of Stratified Treatment Strategies
慢性GVHDにおける炎症局
所環境の包括的理解と層別
化治療戦略の開発
閉塞性細気管支炎を代表とする肺慢性GVHDは、いったん発症すると患者のQOLを著しく阻害するばかりか、移植後晩期死亡の主要な原因となります。私たちは、臨床肺GVHD組織について網羅的な病理/遺伝子学的解析を実施、肺GVHD発症に関与する主要な免疫経路の同定を目指しています。この検討から、諸臓器における慢性GVHD発症機序からの層別化に基づく精密医療を可能にする免疫制御アルゴリズムへ導出します。
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Research on Bone Metabolism After Transplantation
移植後の骨代謝の研究
同種移植後のbone healthは、移植晩期までの生活の質を維持する重要なポイントのひとつですが、この保持についての基礎的・臨床的検討はこれまであまりなされていません。私たちは、移植免疫と骨代謝の関係をマウスモデル実験および患者臨床情報を照らし合わせる検討から明らかにする試みを開始しています。
多発性骨髄腫は、単クローン性形質細胞が骨髄内で増殖し、骨病変や免疫能の低下を引き起こす造血器悪性腫瘍です。治療選択肢は拡がり、プロテアソーム阻害薬、免疫調節薬、抗体医薬の登場により、骨髄腫の治療成績は向上していますが、根治には至らず、治療抵抗性の克服が未だ大きな臨床課題です。
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Mechanisms of Myeloma Cell Acquisition of Resistance to Therapy and Formation of Myeloma Microenvironment
骨髄腫細胞の治療抵抗性の獲得と骨髄腫微小環境の形成機構の解明
骨髄腫の難治性の本質に迫るため、骨髄腫細胞自身の遺伝子変異や発現変化を含む種々の選択圧からの抵抗性獲得機構、および骨髄腫細胞を中心とする腫瘍微小環境の形成様式に注目しています。病態の分子基盤を明らかにし、根治を目指した新規治療法の開発を進めています。
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Regulatory Mechanisms of Gene Expression in Myeloma Cells
骨髄腫細胞の遺伝子発現調節機構の解明
骨髄腫細胞では、形質細胞の特徴を保ちつつも、多様な遺伝子発現の変化が生じます。私たちは、転写因子やエピゲノミックな調節機構を解析し、骨髄腫細胞に特異的な遺伝子発現制御を標的とする治療戦略の構築を目指しています。
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Development of Novel Immunotherapy
新規免疫療法の開発
高い抗腫瘍活性を持ち、体外増幅可能なTh1様γδT細胞を用いた細胞療法の開発に取り組んでいます。さらに、その効果を高めるための腫瘍選択的な免疫療法の開発にも注力しています。また、T細胞の活性制御の観点から、移植免疫研究グループとの共同研究により、抗骨髄腫作用を高める効率的なT細胞活性化法の確立を目指した研究も展開しております。
About Endocrinology and Metabolism
骨Ca代謝異常症およびサルコペニア、糖尿病を含むメタボリックシンドロームおよび代謝異常関連脂肪性肝疾患などにおける病態の解明、新規治療法および新規バイオマーカーの開発を目的として研究を行っています。基礎研究のみならず臨床研究も実施し、”From bench to bedside”すなわち基礎研究で得られた研究成果を臨床に反映させることを最終目標として取り組んでいます。
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Elucidation of the Pathogenesis of Musculoskeletal Diseases and Development of New Treatment Methods
筋骨格系疾患の病態解明と新規治療法の開発
骨粗鬆症やサルコペニアなど筋骨格系疾患の克服は高齢化社会が急速に進行する我が国における臨床重要課題です。我々は、骨芽・骨細胞おいて力学負荷で発現が上昇する一方、加齢やグルココルチコイドにより発現が抑制されるinterleukin-11(IL-11)が骨形成を促進するとともに脂肪細胞分化を抑制することを見いだしました(Kuriwaka-Kido R, Endo I et al: Endocrinology 2013;154(3):1156, Kido S, Endo I et al: PLoS One. 2010;5(9): e13090, Matsumoto T, Endo I et al: Endocr J. 2012;59(2):91)。同時に、IL-11がin vivoにおいて骨粗鬆症および2型糖尿病を含むメタボリック症候群を同時に改善する可能性があることを示しました(Dong B, Hiasa M, Endo I et al. : Nat Commun. 2022;13(1):7194, Hiasa M, Endo I: J Bone Miner Metab. 2024 doi: 10.1007/s00774-023-01493-0.)。また、炎症性サイトカイン受容体以降の細胞内シグナルを抑制することによりサルコペニア病態を軽減できることを示しています(Kanai M, Endo I et al: Int J Mol Sci 2024;25(11):5715)。これらの検討結果は、筋骨格系疾患に対する新規治療法開発に貢献できる成果であると考えています。
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Mitochondrial Transplantation as a Novel Treatment for Intractable Diseases
ミトコンドリア移植による難治性病態新規治療法の開発
ミトコンドリアは生命活動に必須のエネルギー産生プラントであるとともに、さまざまな物質の代謝や細胞内シグナル伝達に関与して細胞機能維持や細胞死などに重要な役割を果たしています。またミトコンドリア機能異常はミトコンドリア病のみならず、老化や代謝異常を基盤とする、2型糖尿病やサルコペニアなどの病態にも関連していることが明らかとなってきました。さらに近年、細胞内外におけるミトコンドリア動態に関する知見も蓄積されつつあり、ミトコンドリア機能や動態の制御機構の鍵となる分子が、種々の疾患の治療ターゲットとなり得ることも明らかにされてきています。我々はこのようなミトコンドリア異常が関与する疾患群の病態解析を行うとともに、健常なミトコンドリア移植による加齢性疾患の改善、あるいはエネルギーを消費するミトコンドリア移植による悪性腫瘍やメタボリック症候群の新規治療法開発に取り組んでいます。
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Pathophysiological Analysis of Ca Metabolic Disorders and Development of Novel Therapies Targeting Ca-sensing Receptors
Ca代謝異常症の病態解析およびCa感知受容体をターゲットとした新規治療法の開発
カルシウム感知受容体(CaSR)は、生体Ca代謝の恒常性維持に重要な役割を果たしています。ヒトにおいて、CaSRの活性型変異は常染色体優性低Ca血症1型(ADH1)の、不活性型変異は家族性低Ca尿性高Ca血症(FHH)の原因となります。内分泌代謝内科ではヒトにおけるCaSR変異部位と病態の関連を解析する(徳島大学倫理審査委員会承認:1281-6)とともに、ヒトCaSR活性型変異遺伝子導入マウスを作成・解析することにより、CaSRのアロステリック阻害薬であるcalcilytic JTT-305がADH1の特効薬となる可能性があることを示しました(Dong B, Endo I et al: J Bone Miner Res. 2015;30(11):1980)。さらに同マウスでは、低骨代謝回転にともなう骨微少損傷の蓄積があり骨強度低下がみられること(Dong B, Endo I et al: JBMR plus 2019: e10182)、腎ではp38MAPK-ATF1-miR317経路活性化を介したアクアポリン2の発現低下およびバソプレッシン作用異常が起こること (Ranieri M, Endo I et al: J Physiol. 2024;603(13):3207)を示すとともに、これらの異常をやはりcalcilytic JTT-305が改善することを明らかにしています。
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Elucidation of Molecular Mechanisms Underlying the Fibrogenic Fate Decision in Metabolic Dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease (MASLD)
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)における肝線維化病態の運命分岐点の解明
近年、肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症などのメタボリックシンドロームを背景とした脂肪性肝疾患である代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)の有病率が急増しています。MASLDには単なる脂肪沈着のまま進行しない病態と、肝臓の炎症と線維化が進行し肝硬変や肝癌に至る代謝異常関連脂肪性肝炎(MASH)という2つの病態が含まれますが、これらを分ける決定因子は不明であり、MASLD/MASHの確立された治療法も存在しません。そこで、私たちはこれまでに心血管疾患や慢性腎臓病の重症度と血中レベルの相関が報告されている可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化受容体(suPAR)に着目し、臨床研究によるリアルワールドでの尿中suPARのバイオマーカーとしての肝線維化予測能と、遺伝子改変MASHモデルマウスを用いて肝線維化に発展する分岐点の分子メカニズムを明らかにしようと研究を進めています。
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